松岡正剛の千夜千冊・207夜
ジョン・C・リリー
『意識の中心』
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その夜のパーティでは、椅子に坐りっぱなしのリリーさんのそばで、ぼくはリリーさんを覗きこむようにして、ずっと話した。その会話はとりとめなく幸福感に満ちたものだったが、とくにどんな説得力も加わっていなかった。にもかかわらず、リリーさんとぼくのまわりには人がいっぱい集まっていた。パーティにはティモシー・リアリーも若い恋人と一緒に来ていて ( 936夜 ) 、ネオテニー ( 1072夜 ) 社をおこしたばかりの伊藤穰一君と話しこんでいた。
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さて、本書『意識の中心』はジョン・C・リリーの数ある著書のなかでも、最も興味深い意識体験をリリー自身のエクササイズを通して報告しようとした1冊で、いわば「内なる自叙伝」とでもいうべきものである。
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おそらくは誰もがやれることではあるまい。しかし、リリーさんと箱根の真夜中に交わした時間からは、まるで好きな童謡を唄っていさえすれば ( 700夜 ) そんなことは気分よくできるのだよというような、そんな安堵が伝わってきたのだった。
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