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松岡正剛の千夜千冊・1598夜
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1598.html
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そうすると帽子屋が「同じことだなんてとんでもない!」と窘めて、なかなかの見解を投げかける。どう投げかけたのかというと、帽子屋は「そんなことを言ったらな、『わたしは食べるものを見る』というのと『わたしは見るものを食べる』というのも同じだってことになる」と言うのです。
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注目したいのは昭和2年に文芸春秋社から芥川龍之介(931夜)と菊池寛(1287夜)の共訳で『アリス物語』を刊行したことでしょう。芥川が翻訳の途中で自殺したので菊地が続きを訳した。挿絵と装幀は平澤文吉でたいへん洒落ている。
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…「注釈訳」とでもいうものもいろいろ出回っていて、最も有名なのが異能数学編集者のマーティン・ガードナー(83夜)のものです。石川澄子が訳し、さらに『新注・不思議の国のアリス』(東京図書)として高山宏が訳した。
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いま、世の中はサクセス・ストーリーばかり。けれどもアリスの物語に出てくるような、おかしな失敗の連続こそ、伝えたほうがいいに決まっている。そういう意味ではグリム童話(1174夜)やカフカ(64夜)やミラン・クンデラ(360夜)のような物語が、いまこそ巷間に必要なのだと思います。みんな「失敗」を大切にした話です。
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アリスが感じる「混乱」や「でたらめ」や「無謀」は、どうやら女の子にとっては平気なんですね。それというのも、ゲームとか議論とか裁判というのは男がつくった制度であって、それが軋んだり変になっていくのは男子社会にとっては、何であれ気掛かりになるのですが、女子にはそんなふうになるのは当たり前なんでしょう。もともとあんたたち男が作ったのだから自業自得だわというのです。
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