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松岡正剛の千夜千冊・1816夜 マイケル・トマセロ『心とことばの起源を探る』

松岡正剛の千夜千冊・1816夜 

マイケル・トマセロ『心とことばの起源を探る( 文化と認知 )  』

URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1816.html

 一口に集約していえば、トマセロは「9カ月革命」と「ジョイント・アテンション」に注目した。9カ月革命というのは、生後9カ月から12カ月の時期に、赤ちゃんが劇的に変化することを強調したもので、ジョイント・アテンション(joint attention)は幼児は生後9ヶ月あたりから「共同注意」をしはじめているということを示す。

 トマセロは(おそらくヴィゴツキーもそう感じたにちがいないのだが)、これは乳幼児の「社会にめざめた時期」が意外に早いというのではなく、むしろ「超社会から入ってきている」(大人がつくった社会ではない「超社会」をスキーマにしている)にちがいないと推断した。もちろん、そうに決まっている。赤ちゃんは“大人”と異なる認知プランナーなのである。

【図の説明文】

  乳児の発達は「注意の追従(指差し理解、視線の後追い)」から「行動の追従(動作模倣、提示・手渡し)」、「注意の操作(指差し算出)」と進む。これは9ヶ月~12ヶ月の間に出現し、発達段階として急激に向上することから”共同注意の崖”(9ヶ月革命)と呼ばれた。

   書斎はほぼ本ばかりで埋まっているが、よく見れば色のついた箱やらビリケン人形やら寺社の護符やらが本棚にくっついている。ジャンクフードの袋も机上の大きな茶碗などもある。YUTOはそれらをあっというまに察知しながら、ぼくの大きな椅子にニコニコしながら近づいてくる。そして「ひげしゃん」と声を出し、小さな手を動かす。「ひげしゃん」は「髭のおじいさん」のことだ。

【写真の説明文】

「ひげしゃん!」と、イシス館の階段壁面に貼られていた写真にうつる松岡をジョイント・アテンションしているYUTO。

【写真の説明文】

乳児が「『何か』を見ている他者」を見ながら「何か」を見る。この「他者のノリが転移する場」こそがZPDだ。上の写真は他者の視線や指差しを理解し,その注視対象に注意を向ける「応答的共同注意」。下は自らの行動によって他者の注意を引き付け,他者を乳児自身の注視対象へと巻き込む「始発的共同注意」。

【写真の説明文】

2014年ごろに「子ども編集学校」が本格始動し、「よみかき編集」ワークシリーズ、「探求型読書」授業など、未知に向かう子どもの力を「情報編集の方法」でひらく活動を展開。2021年には「イシスこどもフィールド」が立ち上がり、松井路代、吉野陽子、景山卓也など、これまで編集学校のワークショップやナビゲーターを経験してきた編集かあさん、編集とうさんたちが参加し、活動の幅を広げている。「大きな木」として学林局の佐々木局長が支え、見守り、リードする。