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松岡正剛の千夜千冊・576夜

松岡正剛の千夜千冊・576夜
塩倉裕
『引きこもり』
 学級崩壊が問題になったとき、多くの識者やメディアは「なぜ今の子供たちは静かに授業を聞けないのだろうか」ということを問うた。しかし、その逆に「なぜ今まで子供たちはわからない授業でも静かに座りつづけたのだろうか」という疑問をもってもよかったのである。
 著者はそのことに注目し、「明治の近代化以降、基本的にみんな学校というものに満足していたからなのではないか」という教育学者の見方を紹介している。そこには「親より上に行ける」とか「社会での適用力が高まる」という幻想が律していた。
 著者が『引きこもる若者たち』(ビレッジセンター出版局)を世に問うたのはそういうときだった。1995年である。