松岡正剛の千夜千冊・981夜
杉浦康平
『かたち誕生』
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「かた」は形代や形式のカタ(形)、象形や気象のカタ(象)、母型や原型や字型のカタ(型)などを孕んでいる言葉である。「ち」はイノチ(命)やチカラ(力)やミヅチ(蛟・蜃)のチ。どちらがなくても「かたち」は誕生しない。
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また杉浦さんは‥葉書より小さなカードを脇に何枚かおいていて、何かを思いつくとメモを必ず簡略なドローイングにしていた。それもやはりスタビロの色鉛筆。すべてはドローイング・メモ。走り書きは一度も見たことがない。なんであれ、丁寧に扱うこと、とくに本のページを繰るときは――。それが杉浦康平だった。
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北島さんもどうやら杉浦会話の‥最後のハッハッハの意味を知っているらしかった。やむなく了承したようだ。それからぼくのところに戻ってきて、「うん、これで大丈夫。それでね、表紙はカラーを使うと大変だから、2色でやろうね」。
ぼくは天にものぼる心地になっていた。こうして1971年9月1日、あの有名になった海表から眼球が浮上する表紙の、『遊』創刊号ができたのだ。