松岡正剛の千夜千冊・1013夜
三浦綾子
『細川ガラシャ夫人』
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が、この作家は幸甚きわまりないデビューだったにもかかわらず、一作でおわることがなかった。…
第3作目の『塩狩峠』を読むとわかるように、そこにはつねに神と人とのあいだの原罪と贖罪を激しく問う姿勢が貫かれてきた。ぼくは、とりわけ『母』を読んでガツンとやられた。『母』は小林多喜二の母セキの目で多喜二の惨殺の生涯を追跡している。
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細川ガラシャ夫人は本名を玉子(お玉)という。ガラシャは洗礼名のグレーシアが桃山ふうの日本読みになった。
玉子の父親は誰だったか。このことをぼくの周囲の多くの連中が知らなかったので驚いたのだが、玉子の父は明智光秀である。この父をもったということに、玉子の第一の、そして決定的な宿命のルーツがあった。
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細川ガラシャ夫人のことを、なぜぼくの周辺の連中は何も知らなかったのだろう?
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附記¶ここに紹介した三浦綾子の作品はだいたい新潮文庫で読める。同じく新潮文庫に『千利休とその妻たち』がある。高山右近が利休七哲に数えられる経緯はこちらのほうに詳しい。
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三浦綾子 Wikipedia> https://ja.m.wikipedia.org/wiki/三浦綾子