松岡正剛の千夜千冊・1019夜
近藤洋逸
『新幾何学思想史』
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とくにロバチェフスキーとガウスに耽溺し、その後はガウスの数学全般に嵌まっていった。本書はそのときのタネ本のひとつで、初版は昭和19年だからぼくが生まれた年になる。
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ぼくは中学のころから幾何学派だったのだ。困っていたところで読んだのが近藤洋逸が旧著を改めて書きなおした本書だった。一読、哲学の香りがして沈丁花に酔ったような気分になった。
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著者は田辺元の弟子にあたる。数学を専門としたけれど、出所は田辺哲学だ。
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ただ日本人は、フランス現代思想にはほいほい屈しても、自身の日本哲学の前哨たるべき田辺哲学をほとんど受容しようとはしてこなかった。それでも最近は中沢新一君が『フィロソフィア・ヤポニカ』を書いて ( 979夜 ) 、ついに田辺哲学の今日的解釈を柔らかく敢行して、いささかヴェールを剥いだ。ドゥールーズやガタリこそ田辺元を読むべきだったという見方は、もっと評判になってもいい。
近藤洋逸はそういう田辺の弟子なのである。
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