松岡正剛の千夜千冊・1219夜
心敬『ささめごと・ひとりごと』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1219.html
〜
氷ばかり艶なるはなし。
心水の月、歌林の花。
いったい「艶」とは何か。
それがどうして
「冷え寂び」なのか。
〜
だから、ぼくにとってはここからが本気の心敬なのである。ぼくは居住まいをただして、そう思った。
実際の心敬がどういうふうになっていったかといえば、一方で『ささめごと』を綴って連歌をゆさぶり、『ひとりごと』を綴って正徹門下を動かし、そして自身は発句に冷えていったのだ。その跡のよすがを知る『心玉集』に、こんなふうにある。
毘親が「霜の色そふかみのあはれさ」と詠むと、心敬は「櫛の歯に風も音する冬の空」とやったのだ。正頼が「露もりあかす草のかり庵」とつなげたら、心敬は「いにしへを忘れぬ山の夜の雨」と切ったのだ。いや、有名な『芝草』では、それを自分一人でやってもみせた。その一方で『ささめごと』や『ひとりごと』にどんなことを綴っていたのかは、あとでふれる。
〜
これで見当がつくように、心敬の「にほひ」は「水青し消えていくかの春の雪」や「月に見ぬおぼろは花のにほひかな」をへて、「みる人を色なる月のひかりかな」に至るのだ。そして、こうなる。
松の葉に冬野の色は残りけり
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心敬『ささめごと・ひとりごと』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1219.html
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氷ばかり艶なるはなし。
心水の月、歌林の花。
いったい「艶」とは何か。
それがどうして
「冷え寂び」なのか。
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だから、ぼくにとってはここからが本気の心敬なのである。ぼくは居住まいをただして、そう思った。
実際の心敬がどういうふうになっていったかといえば、一方で『ささめごと』を綴って連歌をゆさぶり、『ひとりごと』を綴って正徹門下を動かし、そして自身は発句に冷えていったのだ。その跡のよすがを知る『心玉集』に、こんなふうにある。
毘親が「霜の色そふかみのあはれさ」と詠むと、心敬は「櫛の歯に風も音する冬の空」とやったのだ。正頼が「露もりあかす草のかり庵」とつなげたら、心敬は「いにしへを忘れぬ山の夜の雨」と切ったのだ。いや、有名な『芝草』では、それを自分一人でやってもみせた。その一方で『ささめごと』や『ひとりごと』にどんなことを綴っていたのかは、あとでふれる。
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これで見当がつくように、心敬の「にほひ」は「水青し消えていくかの春の雪」や「月に見ぬおぼろは花のにほひかな」をへて、「みる人を色なる月のひかりかな」に至るのだ。そして、こうなる。
松の葉に冬野の色は残りけり
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