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松岡正剛の千夜千冊・1296夜

松岡正剛の千夜千冊・1296夜
リチャード・ワーマン
『理解の秘密』
 ワーマンは、仕事こそが表現であり芸術であり、生活であって技能であると考えている。かつ、どんな仕事の本質も「情報の転移」でできていると考えている。情報の転移によって何がおこるかといえば、そこで初めて「理解」のシャッフルがおこる。だからワーマンは、すべての仕事は「アンダースタンディング・ビジネス」となるべきだと口癖のように言っていた。
システムに「見方」と「見方の移動」を入れておくということになる。このことはすでにジェラルド・ワインバーグ(1230夜)が提起していたことだった。
それには、オーダーやインストラクションがちゃんと動いているかどうかをいつも注意しなければいけないのだが、それを決定づけるのは、そのやりとり(コミュニケーション)のなかで伝える内容に、そのメッセージを成立させるべき「場所」や「背景」がくみこまれているかどうかにかかっているということなのである。ワーマンはこれを「大きな絵」(big picture)の必要性と言っている。
 ここからはまたまたぼくからのヒントもまじるのだが、自分がいったんおぼえたことや感動したことを、その出来事や情報コンテキストの一部始終を思い出して、トレースしてみるのがいい。ここには必ず他者や状況が関与する。そこで、それごとトレースするわけだ。そうすると、これまでワーマンが指摘した条件がけっこう揃っていたからこそ、その出来事が思い出せるのだということがわかる。このトレースをしていれば、“自分さがし”なんて、そのうちケリがつく。このことは、白川静(987夜)に教わった。