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松岡正剛の千夜千冊・1564夜

松岡正剛の千夜千冊・1564夜
ドナルド・A・ノーマン
『エモーショナル・デザイン
 〜 微笑を誘うモノたちのために 〜』
それは、われわれの「知」の大部分は「アーティファクト(もの)をつくる能力」から来ているということだ。
ノーマンと僚友のデービッド・ラメルハートは、その学習行為の基本が、①蓄積(accretion)、②調整(tuning)、③再構造化(restructuring)の3つでできているとみなした。
ノーマンは『人を賢くする道具』の後半で、蓄積・調整・再構造化と、パーソナルビューとシステムビューが重なってきているのなら、次の段階では「文脈」や「物語」を意図したデザインが必要になっていくだろうことを強調した。
脳科学にはいくつも興味深い仮説や実験結果があるし、その一部には「ミラーニューロン」(1469夜)のようにかなり説得力をもちそうなものも少なくない。けれども、…
 道具の哲人ヘンリー・ペトロスキー(1186夜)なら、最初からこの問題にとりくんでいただろう。本書には、このあたりの洞察が欠けていた。
 かつてぼくはこんなことを考えていたことがある。『ブリキの太鼓』(153夜)や『どですかでん』の知恵遅れの少年が、自分は汽車や電車や戦車になりきって動くのだと思っているときの、あるいは谷内六郎(328夜)が描く「電車やピアノの鍵盤になった少年」の、その心と体の出来事を、もっと考えたほうがいいのではないかということを。






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『どですかでん』(監督:黒澤明)