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松岡正剛の千夜千冊・1612夜

松岡正剛の千夜千冊・1612夜
田中修
『つぼみたちの生涯
ふしぎの植物学
雑草のはなし/都会の花と木
植物はすごい』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1612.html

 ぼくが植物についての本に惹かれたのは、3人の際立つ先駆者による。ゲーテ(970夜)、メーテルリンク(68夜)、フェヒナーだ。いずれからも植物学というより植物哲学を突き刺された。

 ゲーテは植物には「原植物」(Die Urpflanze)ともいうべき原形がひそんでいると考えた。ぼくはこの「植物に蹲(うずくま)っているであろうメタ的なるもの」という卓抜な見方に惹かれた。ゲーテは植物にアーキタイプを仮想してくれたのだ。それはラマルク(548夜)の鉱物界=生物界をまたぐ「形成力」を想わせた。

 日本語にはゲン(験)、ツキ(憑)、カン(勘)という言葉がある。メーテルリンクはこのゲン・ツキ・カンのような「はたらき」、つまりは理念実装力ともいうべきを霊感要素や霊感物質として華麗に追跡するようなところがある。ぼくはそれを「ファンタシウムの追跡」と呼んで、メーテルリンクを偏愛していた…

 グスタフ・テオドール・フェヒナー(1801~1887)はハナっからぶっとんでいた。精神と物質を切り離さず、物心両者をつねに表裏一体あるいは不即不離のものと捉え続けて、のちの電気心理学や、感覚物理学あるいは精神物理学の泰斗となった。

『ナナあるいは植物の精神生活』については、いまではピーター・トムブキンズとクリストファー・バードが解説を膨らませた『植物の神秘生活』(工作舎)に詳しい。