松岡正剛の千夜千冊・1624夜
南方熊楠
『南方熊楠全集』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1624.html
〜
今日の熊楠ブームがこうなってきたについては、一人は中上健次(755夜)の、もう一人は中沢新一(979夜)の踏んばりが大きかったと思う。
なかでも中沢の「熊楠コレクション」(河出書房)の仕事とその解説の集大成ともいうべき『森のバロック』(せりか書房)は、従来のクマグス観を破るにたいそう勇敢で、また鋭く、その後の中沢君の仕事にも好ましいものをもたらす基盤になったような気がする(田辺元についての『フィロソフィア・ヤポニカ』がその成果のひとつだ)。
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クマグスが達してみたい世界観をあらわすヴィジョンは、人呼んで「南方曼陀羅」と言われてきた。有名な絵ものこっている。いくつもの志向力とカオス遍歴が「萃点」(すいてん)をめざしてストレンジアトラクトされていくというような図だ。「萃点」がクマグスが辿り着いたアナロジカル・コンテキストの輝く頂点なのである。
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こういうことは東洋は得意だが、原因から結果を三段論法してきた西洋ではこの出入りがヘタクソである。座禅などはそういう萃点を仮想することによって自由な出入りができるようにするところがあるのに、西洋はここで神との合一などを望むから、思索の公式のほうがありきたりな原因結果論になってしまう。「南方曼荼羅」はここを脱するものだったのである。
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南方熊楠
『南方熊楠全集』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1624.html
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今日の熊楠ブームがこうなってきたについては、一人は中上健次(755夜)の、もう一人は中沢新一(979夜)の踏んばりが大きかったと思う。
なかでも中沢の「熊楠コレクション」(河出書房)の仕事とその解説の集大成ともいうべき『森のバロック』(せりか書房)は、従来のクマグス観を破るにたいそう勇敢で、また鋭く、その後の中沢君の仕事にも好ましいものをもたらす基盤になったような気がする(田辺元についての『フィロソフィア・ヤポニカ』がその成果のひとつだ)。
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クマグスが達してみたい世界観をあらわすヴィジョンは、人呼んで「南方曼陀羅」と言われてきた。有名な絵ものこっている。いくつもの志向力とカオス遍歴が「萃点」(すいてん)をめざしてストレンジアトラクトされていくというような図だ。「萃点」がクマグスが辿り着いたアナロジカル・コンテキストの輝く頂点なのである。
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こういうことは東洋は得意だが、原因から結果を三段論法してきた西洋ではこの出入りがヘタクソである。座禅などはそういう萃点を仮想することによって自由な出入りができるようにするところがあるのに、西洋はここで神との合一などを望むから、思索の公式のほうがありきたりな原因結果論になってしまう。「南方曼荼羅」はここを脱するものだったのである。
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