松岡正剛の千夜千冊・1636夜
正木香子
『文字の食卓』
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長じて、杉浦康平(981夜)さんに出会って衝撃をうけた。写植文字を1文字ずつハサミで切って、2ミリほどに細かくカットした両面テープを裏につけ、猛烈なスピードで「文字並べ」をしている。腰を抜かすほどに驚いた。タテ組なら上の文字の形に応じて次の文字の位置を案配していた。
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文字はもともと「声」をもっていた。大半の文字は「口の文字」であって「耳の文字」 なのである。空海はそれを「内声(ないしょう)の文字」と言っていた。
かつて、本は音読されていた。みんなが声を出して本を読んでいた。文字は有声文字なのだ。それが活版印刷が普及するにつれて「黙読の文字」になっていった。
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