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松岡正剛の千夜千冊・1637夜

松岡正剛の千夜千冊・1637夜
ピーター・ウォード&ジョゼフ・カーシュヴィンク
『生物はなぜ誕生したのか 〜生命の起源と進化の最新科学〜』
 地球に短期的な炭素循環をつくっているメインエンジンは、植物がもたらす生命現象である。
 二酸化炭素が光合成によって取り込まれ、炭素の一部が生きた植物組織として閉じ込められた。これらは還元された物質だから、あとでエネルギーとして解放できる。植物が枯れて葉が落ちれば、この炭素は土に移動してふたたび炭素化合物となって土壌の微生物の体内に入ったり、動植物の体の素材になっていく。この炭素化合物が生物たちの体内で酸化されれば、その生物たちはエネルギーを得られるわけである。
 ごくおおざっぱにいえば、タンパク質は生物の体内で4つの役割をもつ。役割というより、生命活動そのものを担うと言ったほうがいい。
 ①別の大型分子をつくること(他者を生成できる)、②他の分子を修理すること(相互の崩壊を救っている)、③物質をはこぶこと(物流・交流・交換のすべてに関与できる)、④エネルギーの供給を確保すること(地球環境の本質に応じて無から有を生み出している)、この4つだ。ようするに、なにもかもがタンパク質のおかげなのである。
 鉱物の表面で生命が誕生したのではないかという考え方は、ケアンズ=スミス(1621夜)が発表していたものだった。
 フレッド・ホイルも「生命の種子は彗星に乗ってやってきた」という説を唱えた。