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松岡正剛の千夜千冊・1640夜

松岡正剛の千夜千冊・1640夜
住野よる
『君の膵臓を食べたい』
 住野はアドレサンス(adolescence)を書いているわけである。青春のほろ苦い胸騒ぎがテーマだ。
 カフカ(64夜)の変身のようにはならないし、レイ・ブラッドベリ(110夜)の『何かか道をやってくる』の少年にもならない。魔法に関心があっても、ヘッセ(479夜)のデミアンはいない。話はあくまで教室セカイ系だけでおこっていて、ごくごく僅かな予感だけが去来する。この僅かな予感だけが肥大していくわけである。そういうお話だ。
… ぼくのラノベ体験はすでにして大林の『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』と『CONFESSION 遥かなるあこがれギロチン恋の旅』で始まっていたのだ。