松岡正剛の千夜千冊・1642夜
鈴木宏昭
『類似と思考』
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このような認知にとって大きな推進力になっているのは、なんといっても「類推」(analogy)というものだ。ルイジの正体はアナロジーだったのである。
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類推による認知は相互的で、冗長であり、協調的であって、重奏的なのだ。どうりで、ルイジは重ね着ファッションがうまいのだ。
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ひとつは、ホランドとホリオークとニスベットとサガートが共著した『インダクション』(930夜)との出会いだ。ここには、帰納思考とメタファーやアナロジーとの重要な関係が述べられていた。
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もうひとつは、チャールズ・パース(1182夜)の「アブダクション」に夢中になれたことだ。アブダクションは演繹法や帰納法の奥にひそむ仮説的思考のしくみをめぐる大胆な推論の方法だが、そこにはソージやルイジたちが、そういう名前では呼ばれてはいないものの、うじゃうじゃ動いていて何かのお役をはたしているのはあきらかだった。
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ぼくはただちに了解できた。アブダクティブ・ステージには楽屋があって、そこではソージやルイジたちが物まね、見まね、コスプレ、連想遊び、見立てごっこをしていたわけなのだ。
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