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松岡正剛の千夜千冊・374夜

松岡正剛の千夜千冊・374夜
田中佳宏
『百姓の一筆』
 一町八反、天下御免の百姓一匹、世の頓珍漢に、一筆参上つかまつる。まさにそういう気概が伝わってくる。
 また、新農業思想とでもいうべきを著述した本も何冊か読んできた。岐阜で直耕をしている中島正の『みの虫革命・独立農民の書』など、なかなか読ませた。「都市を滅ぼせ」というのである。山下惣一の『土と日本人』も考えさせられたし、福岡正信の本は第1冊目から読んでいる。
 その根底には「日本はコメの国である」( 1130夜 ) というまことに大きな前提もある。
 それはその通りだ。ぼくもかなりのコメ派だ。 
 ちなみに、そういう著者がどんな農事にかかわっているかというと、作付け面積は一町八反である。東京ドームをこえる。そのうちヤマトイモが一町四反、ゴボウ二反、サトイモ一反、モロヘイヤ一反。そのほか自家用の作物が少々ある。これで1984、5年の年間収入が600万円くらいになる。そこから機械費や肥料費や厚生費などを引くと、残りが88万円。働き手は著者と母と妻。昔のどんな年貢よりも割りは悪い。
 自然なるもののすべてはおどけたる
   恰好をしてほれそこにある