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松岡正剛の千夜千冊・1611夜

松岡正剛の千夜千冊・1611夜
野中昌法
『農と言える日本人
福島発・農業の復興へ』
URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1611.html

高村光太郎はこう書いていた、「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」。

本書には農事と救済をめぐる活動がいろいろ紹介されているのだが、そのなかから「農と言える日本人」ならではの発見や着眼がいくつも報告されている。
 たとえば「耕作することでセシウムの空間線量率が下がっていく」「落ち葉を食べるミミズにはセシウムがかなり濃縮される」「表面剥ぎ取りは土壌侵害をおこして水系の二次汚染をすすめる」「牧草の汚染は地上部に集中して根には至っていない」といったことは、ぼくのような素人から見ても画期的な観察結果なのではないかと思われた。著者の活動と研究は「農による知の統合」なのである。