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松岡正剛の千夜千冊・1409夜

松岡正剛の千夜千冊・1409夜 鷲田清一 『<弱さ>のちから』 — ホスピタブルな光景 — URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1409.html 〜 大被災した日本。棄損した東北。引き裂かれた家族。 もどかしい声援。断線した心。 3・11におこったのは、 地震と津波と原発事故だけではなかった。 砕かれた母国を前に、われわれの中にひそむ 「挫けそうなもの」が露出した。 〜 そしてあるときから、「自身の端緒が更新されていく哲学」は、ひょっとすると自分自身の中の強い規準にあるのではなく、むしろそれを崩すもの、自分から見えない「弱い方」からやってくるのではないかと思うようになっていった。本書にも、その丹念な模索がしたためられている。 〜  ぼくについては『フラジャイル』が引用されていて、弱さ、脆さ、傷つきやすさに共有されるものの重要性にふれ、「弱さは強さの欠如ではない」ということ、「おほつかなさ」の重要性などが引き出されていた。すでにパスカル( 762夜 )が言っていたことであるが、フラジャイルな哲学では、強さを求めることは自由よりも束縛をもたらすことが多く、むしろ弱いものに従うことが自由なのである。 〜  だとすれば、復興計画だけではまちがいなのである。この際は「母国」というもののマザープログラムに着手することこそ要請されるのだ。しかしそのプログラムは、実に数百年をさかのぼっての取り組みにならなければならないはずである。 〜

松岡正剛の千夜千冊・1406夜

松岡正剛の千夜千冊・1406夜 新潟日報社特別取材班 『原発と地震』 — 柏崎刈羽「震度7」の警告 — URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1406.html 〜  とりわけ、被災者たちが巻きこまれた惨状と悪夢は、想像力をはるかに超える。その一方で、コンビニやスーパーからは乾電池、水、おにぎり、パン、トイレットペーパーが消え、電力とガソリンが悲鳴をあげ、為替が急変して、1ドルが80円を切り、株価が乱高下を始めた。 〜  そもそも原発は放射性物質(核分裂生成物)が勝手に出てこないために、基本的には3つのバリアーで守られているはずだった。  第1のバリアーはペレットで、核分裂生成物を0・2ミクロンほどの酸化ウランの粉末に圧縮し、ペレット状に固めてある。これが破れたばあいも、第2のバリアーの燃料被覆管という金属管がペレットを密封している。金属管はペレットを詰めている燃料棒で、ジルコニウム合金でできている。  しかしペレットそのものが熱伝導が悪いため、この金属管は外側が500度でも中心部は1500度になり、わずか5ミリの差で法外な温度差が生じる。そのため異常がおこるとまずペレットが縮み、核分裂生成物ができてこれが膨れ、ひび割れになることがある。これらのバリアーが破れると、放射性物質は原子炉の中を通る冷却水の中に出てきてしまう。  そこで第3のバリアーとしてこの冷却水を封じこめる圧力装置が用意されている。しかしこれも破損すれば、冷却力が失われ空焚き状態になる(今回はこれを補うために海水が導入されてきた)。  これが3つのバリアーだ。外側からいえば、コンクリート建屋、分厚い原子炉格納容器、頑丈なはずの圧力装置、燃料棒、ペレット、という順に安全弁があるというふうになる。そして、これらすべてが破砕か損傷すれば、万事が休していわゆるメルトダウンがおこる。 〜  日本の原発はアイゼンハウアー提案の翌年、突然に原子炉に関する基礎研究調査費が提案され、衆議院で予算が通過したときから始まった。これを強引に進めたのが中曽根康弘である。  あとは日米原子力協定で濃縮ウラン受け入れが決定し、総理府内に原子力局がおかれ、科学技術庁が発足すると同時に、読売・日テレのドン・正力松太郎が原子力委員長に就任して、イ...

松岡正剛の千夜千冊・1405夜

松岡正剛の千夜千冊・1405夜 尾池和夫 『新版 活動期に入った地震列島』 URL> https://1000ya.isis.ne.jp/1405.html 〜 東日本・太平洋巨大地震。 マグニチュード9・0。途方もない大津波。 〜  異才イアン・ハッキングの『偶然を飼いならす』( 1334夜 )の紹介のときに書いておいたように、世の中が確率統計で「危険の度合いを割りふる」ようになったとたん、人間社会は何もかもを「正常値」(normal)と「社会病理」(pathological)に分けたがるようになるか、そうでなければ「成長」と「停滞」、あるいは「勝ち組」と「負け組」に分けて、かえって自分たちの首を締めるようになったのだ。  また、そんなことをしているうちに、木田元の『偶然性と運命』( 1335夜 )であらかた書いたように、ついに本来の「自然と人間と社会のあいだ」に君臨していただろう「偶然」をなんであれ排除できるはずだという傲慢に達してしまったのだった。 〜  と、ここまで書いてきたとろで、赤坂の事務所が大揺れした。「松岡さん、外に出てください」という声が聞こえる。ラジオは静岡県東部で震度6強の地震が発生したのだと言っている。いま、3月15日夜の10時35分。 〜