松岡正剛の千夜千冊・104夜
レーニン
『哲学ノート』
〜
が、もうひとつの読書体験が忘れられない。本書はレーニンの読書に関する書き抜きノートそのものの翻訳で、そのため岩波文庫版ではレーニンが施したアンダーラインやメモや括弧やコメントがそのまま復元されているのだが、そのレーニンのメモやマーキングを読むことが大きな愉しみだったのである。
〜
しかもぼくは、この本で初めて、世の哲人や学者や革命家たるものがマーキングをしながら本を読んでいるのだということを知ったのだった。
〜
それがレーニンの『哲学ノート』でふっきれた。開眼したのである。なんだ好きなようにやればいいんじゃないかという爽快を得たようなものだった。これ以来、ぼくは図書館に通って本を読むときは別にすると、自分で本を入手して、好きに書きこむことを愉しむようになっていく。
〜
さて、本書に収録されているレーニンが読んだ本とは、ヘーゲル『論理学』『歴史哲学講義』と『哲学史講義』、ラッサール『エフェソスの暗い人ヘラクレイトスの哲学』、アリストテレス ( 291夜 ) 『形而上学』、フォイエルバッハ『ライプニッツ哲学 ( 994夜 ) の叙述・展開および批判』、そしてマルクスとエンゲルス ( 789夜 ) の共著になる『神聖家族』である。
〜